クレディセゾンは2025年9月、AI戦略「CSAX」を始動した。全社員へのAI配布から1年余りを経て、同社が次に取り組んだのは、ベテラン社員10名の「経験・判断」をAIで組織知に変えるプロジェクトだった。2026年10月21日に開催されたメディアブリーフィングから、その最終報告の模様をレポートする。
数ヵ月ごとに勢力図が変わる 「マルチAI」で削減時間は目標の79%に
冒頭に登壇したのは、取締役(兼)専務執行役員CDO(兼)CTOの小野和俊氏だ。CSAX(Credit Saison AI Transformation)始動からの1年で小野氏がまず挙げたのは、生成AIの勢力図の変化の速さである。
クレディセゾン 取締役(兼)専務執行役員CDO(兼)CTO 小野和俊氏
2025年秋にGoogleのGemini 3やNano Banana Proが登場すると、画像生成などの領域では2ヵ月足らずでGoogleが優位に立った。ところが2026年4月には、OpenAIのChatGPT Images 2.0が画像の覇権を取り返したという。
「往復ビンタのように、本当に数ヵ月に1回、勢力図が書き換わっていく。そうした情勢を受けて、一つのLLMやプラットフォーマーに完全コミットするのではなく、マルチAIで行くと早々にピボットしました」(小野氏)
ChatGPTを全社員が使う思考・効率化の基盤に据えつつ、資料作成にはGoogle AI、事務スタッフにはMicrosoft 365 Copilot、エンジニアにはOpenAI CodexやClaude、Amazon Qと使い分ける。
ChatGPT Enterpriseは3,645アカウントで基本的に全社員に配布済みで、2026年9月のMAUは96.0%。直近1ヵ月で利用されたカスタムGPTは1,205個に上る。
CSAXでは、2019年比で累計300万時間の業務削減を2027年度末までの目標に掲げる。2026年9月28日時点の累計は236万2,853時間で、進捗率は79%に達した。
内訳は内製開発が170万18時間、ノーコード/ローコードが16万3,673時間、AIが49万9,162時間だ。2025年度下期から取り組み始めたAIは、同年度の削減時間の半分ほどを占めるまでになった。2026年度も上期だけで、AIによる削減は前年度並みの25万時間前後に達している。
小野氏は「本来最も大事なのは数字で説明しにくい効果」と前置きしたうえで、あえて定量化できる業務削減に絞って示した。
全社で起きた「トークン切れ」と「カラーコピー問題」
小野氏が「センセーショナルな事案」と振り返ったのが、全社規模の「トークン切れ」だ。
ChatGPT Enterpriseのクレジットは月初に上限まで付与され、利用とともに減っていく。月を追うごとに消費は深くなり、2026年6月15日、ついに1ヵ月分を使い切った。
「うちのようにお客様基盤や歴史、規模のある会社でトークン切れはないでしょう、と私も思っていました。ところが社内で『業務が回らない』と大騒ぎになったんです」(小野氏)
そこで打ち出したのが「カラーコピー問題」という比喩だ。複合機の「打ち合わせは白黒、大事なときだけカラー」と同じく、ちょっとした問い合わせはクレジットを消費しないInstantモード(白黒)で、ここ一番ではThinkingやDeep Research(カラー)を使う。
社員がこれを守った結果、翌月からクレジットは切れにくくなった。
一方で小野氏は、ここまでの取り組みは社員一人ひとりの仕事のAX(EmployeeAX)にとどまるとも言う。今後はAI前提で部門や部署の構成から再設計する「CorporateAX」、顧客・取引先・仕入先との体験を変える「StakeholderAX」へと広げていく構想だ。
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押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)
立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...
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