予想される現場からの反発……実態はどうだったか
──一方で、AIに代替される恐怖や不安を感じるメンバーもいるのではないでしょうか。特にこれまで積み重ねてきたノウハウに自信をもっているオペレーターの方も多いはずです。現場からの反発はありませんでしたか。
大保:他社の方からも同じことをよく聞かれるのですが、まったくありませんでした。当社の経営陣・本部長のメッセージが大きかったと思います。トップダウンで「AIの時代はくる。仕事がとられるという話ではなく、AIを理解してAIを使いこなす人になっていくんだ」と、1年以上かけてことあるごとに発信してくださっていました。
それがセンター長に伝わり、センター長からグループ長に伝わり、課長、現場のオペレーターへ。ここまで強いメッセージを、私自身も初めて経験しましたね。結果的に、私が知る限りでは、AIへの不安やネガティブな意見は一つも上がっていませんでした。むしろ、AIオペレーターに興味があって、私も改善施策を提案したいという声をいただくほどでした。
──改善という意味では、ベテランオペレーターのノウハウをどう吸い上げて反映させるかが差別化要因になるのではないでしょうか。AIは導入後の「育てる」フェーズが本番ともいえますよね。
大保:そうですね。まだ最適解は見つかっていませんが、そもそもAIオペレーターで人間の応対を置き換えたいわけではありません。それぞれに求められる顧客体験は違っていて、たとえばAIに「それは大変でしたね」と寄り添われても白々しく感じると思うんです。つまり、人間と同じことをAIがいえばいいというわけでもない。そのため、現場からも経営層からも「こうしたほうがいいのではないか」という有益なアドバイスをいただいて、都度取り入れています。センターの方々の切り替え、AIに対する向き合い方には感謝しかありません。
──人手不足の影響を受けやすいコンタクトセンターは、AI以前から業務効率化や生産性の向上に取り組みつづけてきた部署です。そういった歴史からも、AIアレルギーが比較的ないのかもしれません。
大保:本当にそうだと思います。コンタクトセンターは、業種が違っても「品質を下げずにどう効率化するか」を長年追求してきた場所です。
たとえば当社では、AIオペレーターの前にも、人間のオペレーターがお客様に返す文章をAIが生成する仕組みに挑戦してきました。導入時、オペレーターが手を加えずにそのまま送信ボタンを押せるレベルのものは5割程度でしたが、1年かけて9割近くまで根気よくAIを育ててきたんです。その努力があったからこそ、最初から完璧を求めるのではなく「育てて行こう」という発想が社内に根付いたと思います。そのため、よくあるPoC止まりに陥らず、周りの納得感もあった。やはり、施策はいくつもこなしてみるものだなと実感しました。
──AIオペレーターも同じように現在進行形で育成中かと思いますが、その中で発見はありましたか。
大保:人に何かを伝えるとき、文章にすることが多いと思うのですが、テキスト上では完璧だと思っても、音声で聞いてみると長すぎて何をいっているかわからないケースはよくあります。それをわかっているつもりでも、いざやってみるとお客様が途中で電話を切ってしまったり……。そのときに「長くてわかりづらかったのか」と改めて気づかされます。お客様の反応に対して仮説を立て、一つひとつ改善していくしかありません。リリース後も、この作業はずっとつづくと思います。
