暗黙知の継承を「人」から「デジタルツイン」へ
森:足元では、あらゆる分野で全社員がAIを徹底的に活用し、ビジネスインパクトを創出することを掲げられています。具体的な取り組みは進んでいますか。
ルゾンカ:はい、すでに動き始めています。もちろん、現場の安全に関わる部分へのAI実装は慎重に判断すべきですが、それ以外は、各現場が積極的にAIを使えるように支援し、必要なツールも渡しています。現場の方々も、壁打ち相手としてAIを使うなど、積極的に活用を進めてくださっています。会社としては、それを全力で後押ししていきます。まさに「Team COSMO」ですね。
現場の社員にはなるべく負荷をかけたくないため、彼らがストレスなく働き方を変えられるように、我々バックオフィス側が上手く立ち回る必要があります。そうした各部門の立ち位置が、この数年で明確になってきました。
森:ルゾンカさんが目指されているように、さまざまな場面にAIを組み込む上では、現場の方々の暗黙知は欠かせません。人口減少の中で、若手への技術継承はどの企業でも課題になります。そこにAIはどう介入できるとお考えですか。
ルゾンカ:ここが、当社が力を入れてきたデジタルツインの役立つところです。製油所や事業所を丸ごと3Dで再現したデジタルツインを活用していますが、現場を点群データで仮想空間に取り込んでいるため、どこに何があって、今どのような状況なのかを画面上で把握できるのです。そうすると、実際に現場まで足を運ばなくても、たとえば「あの場所に登るにはハシゴが何メートル必要か」といったことまで、画面上で線を引けばすぐに分かります。
仮想空間には、様々な情報を紐づけて蓄積できます。その中から、現場で発生しているトラブルの詳細など、AIが必要な情報を提示してくれます。分かりやすい例が過去の不具合の履歴です。以前どのような不具合が起きたかは、これまでベテランの頭の中に蓄積されており、新入社員にはわかりませんでした。しかし今の仕組みであれば、リモートで誰でも把握できます。
だからこそ、私たちが注力しているのは、AIが情報を正しく引き出せる形に整えること。データとAIのガバナンスですね。土台が整えば、熟練の技術者がすべての製造所に潤沢にいなくても、AIを活用して1人がリモートで助言できます。
若手がデジタルツインやAIを使いこなし、数字を見てアクションを判断できるようになると、ベテランのノウハウが自然と会社の財産に変わっていきます。そのためにも、AIはなくてはならないものであり、使い倒すことで今後のビジネスの礎が築かれるでしょう。
そしてデジタルツインの先にあるのが、フィジカルAIです。最終的に目指すのは、機械やシステムが自ら判断して動くオートノマス(自律的)な状態。数年前にダボス会議で私が話したテーマですが、実現は可能だと考えています。法的な制約など対応すべきことは多いものの、結果的にビジネスとして大きなプラスになるはずです。
